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2004年10月27日

シャワーを浴びている時に。

 人生は「ただ生きる」ためにあるのではない、のではなかろうか。
そう思ったのは、いつだったか、リハーサルを済まして夜遅くシャワーを浴びていた時の事だった。当たり前の事であるのだけれど、蛇口をひねると熱湯がでて、その日の疲れや汚れを洗い流す事ができる。「うん、ボクらはとても恵まれた環境に生まれてきた。」と、その時感じると同時にこの恩恵を一体何に対して返す事ができるのだろう、と思った。世界にはとても書き表せない程ひどい環境に生を受ける人だって存在している。明日を生きる確率がとてつもなく低い人がいて、この恵まれた自分は世界に何を貢献できるのだろうか?
 その時ボクはひらめきがあった。つまりそれは、「今の人生をより良く生きなさい」ということ。「自分の人生をより良く生きる事によって伝えなさい」こうひらめいたのだった。生きていく事によって起こるすべての事態に対して最善を尽くすこと。とにかく今の生を楽しみ尽くすこと。自分らしく生きること。これしかないように感じた。ボクは恵まれている。明日の生を気にしないで生きていられる。自分の生について一生懸命考える余裕がもたらされている。だからハッキリとこの生を「より良く」「より自分らしく」生きることは、それ事態が義務のようなものなのではないか。何か物事を良く為そうとする時、まずは自分が良く生きる事だ。シッカリとその生を楽しんで、生きる喜びを伝える事しかできないと思った。それはもう啓示を受けたような気がしたくらいだ。
 その一方で、ある日打ち合わせの帰りに下北沢の駅で電車を待っていると、目の前で人身事故の現場に遭遇した。つまり、人が電車に飛び込んだわけである。その時ボクが思ったのは「あぁ、人はこうも簡単に死んでしまうのだなあ」という事だった。そう思うと命の儚さをすごく実感して、今できる事はどうあっても今やっとかないとイケナイ気がした。生きている事がすごく有り難い事であるなら、それを無駄にして毎日を過ごしてはイケナイ。やろうと思った事、やりたいと思っている事、これを実現するために毎日努力しなければ。そのうえで「より良く」「より自分らしく」生きていかなければならないのだ。
 それでボクは音楽を作っているわけだが、常にそれが自分自身にとって嘘がなく、自分が一番解放できるものでありたいと思っている。誰かの為、何かの状況に対して、社会の動きに対してではなく、自分達が面白がる為、自分達が一番解放される為、自分達が何かを見つける為に活動している。そうする事が一番の世界に対する貢献だと信じているからだ。なんだか馬鹿みたいな言い種だが、ボクは世界に役に立ちたいと思ってるんだ、真剣に。 

2004年10月26日

マティス/ボブ・ディラン/マイルス/ミック

 マティス展を観に行ってきました。
というと、さすがアーティスト、芸�全般に精通しているな、と思う人もいるかもしれないが、ボクが美術に興味を持ち出したのは、ごく最近のことだ。と言うより「なんとなく接点があるような気がしてきた」という方が近いかもしれない。バンドの音楽が変わってきたせいもあると思う。それを具体的に説明するのは難しいが、絵を描くプロセスとバンドで音楽を紡いでいくプロセスは、そう遠くないと感じるからだ。ようやくそう思えるようになった。(ボブ・ディランが"Blood On The Tracks(血の轍)"を録音した頃、絵画で勉強した事を音楽に応用してみた、みたいな事を言っていたが、それについては良く分からない。でも「Tungled Up In Blue/ブルーにこんがらがって」は、完璧な曲だと思う。)
 マティスに関しては、良かった。なんとも素人的感想で申し訳ないが、「上手だなぁ。」と思った。絵のヴォリューム感が良かった。なんと言うか、そこにはモリッとした膨らみと存在感が感じられた。それは、ボクの感じる本物の良さなのだ。うねり、みたいなものか。ボクは音楽にも常にそれを求めているような気がする。
 それと何よりもカラーだ。マイルス・デイヴィスのバンドを「カラーリングだけで演奏している」と評する人もいるが、なかなか言い得ているように思う。メンバーがそれぞれキャンバスに(絵を描くと言うより)色をつけていくように演奏できたら、それはそれは美しいものになるだろう。しかしそのためには演奏者の素晴らしいセンスが必要なのは言うまでもないし、テクニックだって無いとイケナイ。よく「テクニックよりもイキオイ」とか「ロックは初期衝動」とか言う人もいるが、ボクはそうは思わない。衝動=激しさ、みたいなモノだとすれば、それは最初からそこに「存在している」のであって、ボクの経験から言っても無くなる事はあり得ない。しかし音楽も表現のひとつであるとすれば、絵を描くのと同じようにテクニックは必要なものなのだ。「そうでなくて……」なんていう人は、多分なまけているんだと思う。以前ミック・ジャガーが音楽と苦闘している若者に一言と求められてこう答えていた。「音楽についてできる限り知って欲しい。努力してうまくなって、自分自身のオリジナルな曲を書け。」ボクもそれは肝に命じている。
 随分脱線した気もするが、絵を観るのもなかなか良いものです。絵も音楽もない生活もできると��思うケド、ただ生きていくだけの人生をボク達は求められてないような気がしている(それについては、次回書こうと思う)。

Bob Dylan "Blood On The Tracks"
Miles Davis " In A Silent Way"

2004年10月20日

Lunaについて。

 ある音楽が何か偶然のタイミングで人生に現れる時がある。と言うより、音楽はそうやって人生に忍び込んでくる。誰もが経験している事である。11年以上前、ボクは妻とロンドンに旅行に出掛けた。初めての海外旅行で、英語も話せないクセにホテル一つとってない、いささかスリリングな旅行だったが、ボクらはまだ十分若くて、やる気だけはバリバリあったので、昼に夜にあちこち出掛け廻ったものだ。若くて何も知らないので、どんな小さな事にも感動できたし、そういう感性が失われていくのが年を取る事だとすれば、ボクは年を取ったといえる。(とはいえ、その頃感動してた物事の恐るべき取るに足らなさよ……。まったく赤面してしまう程だ。)
 滞在中も終わりに近づいたある日、音楽誌をみてVelvet Undergroundの再結成コンサートがエディンバラというスコットランドの北にある年で催される事を発見した。一も二もなく電車に乗って(しかも勝手に空いてた指定席に座って)エディンバラに駆け付けた。(駅ではチェックのスカートを着たおじさんにビスケットをもらった。)そこで劇場へ行き、ヤクザみたいなスコットランド人から2倍の値段でチケットを買った(良い席だった)。その前座をやってたのが、Lunaというバンドだった。音も小さく、客電もついた状態だったが、引き付けられるモノがあった。その後に、もちろんVUも見たのだけど、どう考えてもLunaの方が良かった。(Lou Reedをライブで見て良かった記憶はない。)いやむしろ、Lunaの方がボクの思うVUに近かった。翌日、ロンドンに戻ると小さなクラブでやることになってたので、それも見に行った。それは、物凄く良かった。旅の疲れがすべてとれてしまった。そしてその日からLunaはボクの音楽史の1ページに永遠に刻み込まれる事になったのだと思う。(ギターのアプローチを考える時、密かにボクはLunaのギターに、多大に影響を受けている。自分でも驚く程。)ボクはLunaのアルバムを全て持っている。
 さて、11 年たって京都で行われたボロフェスタという素晴らしいフェスで、またLunaを見る機会があった。(ズボンズは翌日の出演だった。ボロフェスについては、また日を改めて書こうと思うが、非常に良いフェスだった。)しかも気付いたらズボンズとLunaは同じレーベル仲間になっていた。そのよしみで終演後楽屋に挨拶にノコノコと出掛けていったが、あの気難しそうなリ−ダー、ディーンは人の良さそうな小柄な人であった。Lunaのライブは当時とほとんど変わりなく、素晴らしかった。たくさんのミュージシャンを見ているが、11年やってても変わらず良いライブをやるロックバンドはボクの知る限り、無い。音楽的に新しい事をやっていくのではなく、ただ現在も以前と変わらずフレッシュだという事なんだろう。それが如何に難しい事か、どんなミュ−ジシャンを見てても良くわかる。これからも、いつまでもLunaのまま輝いて下さい、と考えていた所に彼らのHPに解散の表明がなされていた。これはショックが大きかった。ステージを見る限りでは、その理由は不明である。何か新しい事でもやりたくなったのだろうか……。まったくもって残念だ。(解散については………、これまた長い話になるので、またいつかにしよう。)
 そのLunaの音源の中にボクの完璧な推薦盤は無い。Lunapark,Bewitched,Pup Tentあたりがアルバムとしては良いが、なんといってもSlideというタイトルのepが�番心に残っている音源になるだろう。2曲目のIndian Summer(原曲はBeat Hapennings)のカヴァーが素晴らしい。この曲の陶酔間はまさに今のズボンズで表現しようとしている事と近いと思う。しかし考えてみれば、解散を嘆くよりもこの音源を残してくれた事に関してボクは感謝すべきかもしれない。渡したズボンズの音源も聴いてくれてると良いんだけど。(ジャケをUPしたいんだけど、やり方がわからなかった……。勉強します。)
LUNA website
http://www.fuzzywuzzy.com/
P-Vine Records
http://www.bls-act.co.jp/artists/luna.html

2004年10月16日

マスターDより御挨拶。

ズボンズNewアルバム発売と相成りまして、偶然同じ日にこのようなスペースをオープンする運びになりました。ココはワタクシ、ドン・マツオが興味を持った物事を日々書き込んでいくコーナーであります。まぁ、今日のところはもう遅いので挨拶だけにしとこう。眠いからね。では、ごきげんよう。
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